BtoBマーケティング支援企業は難しい
BtoBマーケティングが注目されてきたのはここ数年のお話になります。
私が初めて使用したMarketo(現:Adobe Marketo Engage)も、日本法人設立が2015年のお話で、私はその当初から幸いにもMarketoの企業内における管理者兼マーケティング推進者を担当しておりましたが、それでも現在の2022年をもって7年といった状態です。
現在における企業のマーケテイングは、BtoBマーケティングを経験してきた方が推進されるというよりは、今まで営業部や営業推進部といった組織が主となりながら、兼務をされているケースも多いのではないでしょうか。
そして、このBtoBマーケティングも導入する企業が急激に増加しており、慢性的な人材不足に陥っているのが実情だと思います。
実際、企業においてマーケティングを始めてみると、すべきことがとても多く人が足りていないという事もあるでしょう。
マーケティングを実行して成果を出していくためにリソースの確保はどうしても必要になってきます。人での確保もさることながら、BtoBマーケティングのノウハウの確保が必要になります。
BtoBマーケティングに取り組むにあたって「外注」は有力な選択肢ですが、「丸投げ」することは出来ず、BtoBマーケティングの外注には一定の難しさが伴ってきます。
そもそもの企業におけるマーケティングは明確になっておらず、課題整理が行えない。
マーケティング支援先を選定した経験者はおらず、また選定基準が無い
まず外部支援を得るにも、自社のマーケティング課題はどこにあるのかの整理が必要になってくるわけです。
マーケティングという言葉はこちらの記事を読んでいただけている方によっても解釈が大きく異なると思いますが、マーケティングは広告や集客の事ではありません。マーケティングのゴールは売上への貢献です。
デジタル技術を使い、人間系の営業活動の壁を超え、まだコンタクトしたことのない領域のお客様との接点を見つけ、関係性を作りながら商談を創出して、売上に貢献する。そして営業面でいえば、予め顧客が興味を持つプロダクトや課題を予めデジタルな情報から獲得し、購買意欲の高いお客様とのみ商談を行ういわゆるピュアセールスを実現するといった、営業プロセスの変革、言い換えますと、売上の仕組みづくりになります。
この営業の全体プロセスから課題を抽出しておくことが、外注選びのポイントとなります。
ユーマーケティングのBtoB製造業の営業デジタル化に役立つメルマガに登録する
こちらの図はGartner社からリリースされている内容ですが、BtoBにおいての発注プロセスはこの4つを経て行われるとしています。
- Problem identification 問題・課題の特定
- Solution exploration 解決手段の探索
- Requirments building 要求仕様書の作成
- Supplier selection 支援先の選定
この要件定義書(要求仕様書)の作成が、BtoBマーケティングの全体像を理解した上でないと定義が難しいものになると思われます。つまり何を依頼したいのかです。
BtoBマーケティング支援会社の違いは分かりづらい
BtoBマーケテイングに取り組む企業が増え、外注を検討している企業も多くなってきている一方で、マーケティング支援会社、マーケティングコンサルタントの違いや、得られる価値の判断ができず、どこへ支援を仰げば良いのか分からない。といった声も聞くようになってきました。
そして多くの企業は「デジタル化」「デジタライゼーション」「DX」「Webマーケティング」「デジタルマーケティング」「営業DX」といったワードを使うために、更に得られる価値、課題が解決できるのか?が分かりにくくなっている要因の1つかと思います。
このビジネスにおけるマーケティングを外注するにあたって、会社選びを経験されている方も少ないのではないでしょうか。
- そもそものマーケティング課題を抽出できない
- 支援先が言っていることが理解できず、通訳が必要
- 依頼後の成果が不透明
- 支援費用が高額
マーケティング支援サービスを持つ企業やコンサルタントも多くあると思いますが、マーケティングを始めるにあたっての前段(組織的課題、インフラ的課題)自社営業課題の整理、顧客の定義、いわゆる戦略策定を支援する会社から、マーケティングの個別施策(SEO、デジタル広告etc)まであります。
これらが世の中的にはすべてマーケティングとして扱われる事がとても分かりにくくしていますが、ユーマーケティングは、前途の「売れる仕組みづくり」の構築のために、戦略、戦術(施策)の「型」をまずはご理解いただくための支援を行なっております。
お話を戻しますが、
マーケティング支援会社の協力を得た結果、課題は本当に解決できるのか。
そして、コンサルティング部分が含まれますと企業によっては数百万のコストも生じてきます。
ここまでのまとめです。
1.BtoBマーケティングに取り組む企業が増加し、外注を検討する企業も増えている。
2.マーケティングの概念やすべき事を理解しなければ、外注へ何を依頼してよいかが定義しずらい
3.マーケティング支援会社・コンサルタントの違いが分かりにくい
4.企業にとってマーケティング支援会社への依頼は困難を伴う
BtoBマーケティングの支援会社の種類
広告代理店
広告代理店は旧来からあるマス広告を中心とした広告を取り扱っている代理店の他、デジタル(ウェブ)広告の代理店も多く存在しています。マス広告は、対象ターゲットの広いtoCでは多く活用されていますがtoBでは顧客が明確かつ狭いターゲットなので適切ではありません。圧倒的にデジタル広告でピンポイントで狙うべき顧客に広告出稿した方が無駄撃ちがなくて済みます。
参考までに以下に広告媒体の長所と短所を記載します。
媒体 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
テレビ | ・聴覚と視覚による訴求 ・広いカバレッジ | ・高コスト ・対象を絞りにくい ・メッセージが短命 |
新聞 | ・高い柔軟性 ・広いカバレッジ | ・視覚のみの訴求 ・メッセージが短命 |
雑誌 | ・対象を絞りやすい ・メッセージが長命 | ・視覚のみの訴求 ・低い柔軟性 |
ラジオ | ・低コスト ・対象を絞りやすい | ・聴覚のみの訴求 ・メッセージが短命 |
インターネット | ・対象を絞りやすい ・双方向性がある | ・消費者によるデバイスを通じてたアクセスが必要 |
屋外 | ・高い反復性 ・低コスト | ・特定の地点に限定 ・対象を絞りにくい |
ダイレクトメール | ・対象を絞りやすい ・多くの情報を提供 | ・低い閲覧率 ・顧客のアドレスが必要 |
広告代理店はあくまでマーケテイングプロセスにおける「認知・集客」フェーズに特化した施策の専門家とも言えます。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームは上流工程が中心でマーケティング戦略を担う事が多いと思いますが、立案した戦略にもとづいて施策を実行するフェーズまでは支援メニューがないケースが多く、また成果物パワーポイント等の資料までというケースが多いのではないでしょうか。
SaaSベンダー
デジタルマーケティング領域で急激に多くのサービスがリリースされてきている領域ですが、あくまでSaaSベンダーの目的は自社のSaaSを利用してもらうことにあるため、カバーされる範囲はマーケティングプロセスの一部ということになります。
しかしながら、BtoBマーケティングにおいて欠くことのできないSaaSは、購買プロセスの長いBtoBビジネスにおいて、顧客との関係性を中長期で維持するためのマーケティングオートメーション(MA)ツールや顧客情報一元化や商談情報、案件管理のためのCRM/SFAがあります。
独立系
世の中の急激なデジタルシフトによって、いわゆるデジタル人材、マーケターの不足が叫ばれています。これら人材は非常に市場価値が高くなり採用も困難な中、実力者達は独立してマイクロカンパニーとして、またはフリーランスのプロマーケターとして活躍されるケースが目立ってきています。この独立系プロマーケターは、戦略の立案からマーケティングプロセス全般を支援するマーケティングディレクターから、各マーケティング施策における施策単体の専門家まで幅広いです。
デジタル広告
デジタル広告を扱う会社は、マス広告をあつかう総合代理店からの派生や独立系といった形で急成長を遂げています。しかしながら、あくまでマーケティングプロセスの一部(プロダクトの認知・集客)フェーズに特化しており、ウェブサイトへの集客までとなります。
SEO
SEOは検索エンジン最適化、つまり貴社のウェブサイト自体の自力集客力をアップさせる手段です。ウェブサイトへの集客は、デジタル広告を利用する事に合わせて、平行してSEOへの取り組みが欠かせません。
こちらも、マーケティングプロセス全体の認知・集客フェーズに対するサービスです。
SNS
SNSは、認知集客からその後の顧客とのエンゲージメント(関係性)の維持に用いられますがtoBの場合は運用が難しく、またコンテンツの発信においては社外発信申請や承認プロセスなどの課題が多い、また炎上リスクへの対応などが必要なこともあり難易度が高めです。ただこちらもマーケティング施策の一部です。
ウェブ制作
ウェブ制作会社が、マーケティングの手法を取り入れ「ウェブマーケティング」としてサービスを提供するケースが多いです。このウェブマーケティングという言葉が指す領域ですが、こちらも狭義でして、マーケティング>デジタルマーケティング>ウェブマーケティングとなります。
BtoBビジネスも場合は、デジタル活用は必須ですが、デジタルのみで営業プロセスが完結するケースは少なく、クロージングははやり営業の対面でのコミュニケーションが求められます。ウェブマーケティングは、デジタル接点でのコミュニケーションを重視しますが、デジタルマーケティングではオンラインとオフラインの双方のコミュニケーションチャネルを活かしながら商談を創出する必要があります。
BtoBマーケティング支援先の選び方
数々の事業会社をご支援してまいりましたが、これから取り組まれる企業も既に取り組んでいる企業にも言えることですが、個別最適となっているケースが非常に多いと感じてます。
この個別最適とは、マーケティングにおける個別施策は突き詰めるのですが、結果としてSEOであれば月間のPV、UU、メールマーケティングであれば開封率、クリック数などに一喜一憂するものです。
マーケティングの目的はあくまで商談の創出です。個別施策に集中するあまりに近視眼となり、その施策が案件化に向けてどのように貢献しているのかを見失ってしまうケースです。
各企業の取り組み状況別に支援先の選択パターンの例を記載してみます
BtoBマーケティングなるものが理解できていない、社内に有知識が不在
この場合は、各個別の施策を支援する企業ではなく、戦略から語れる支援先への相談が望ましいと思います。SEOやデジタル広告がデジタルマーケティングなのではなく、あくまで個別施策です。
BtoBマーケティングに取り組んで入るが案件に紐づいてこない
こちらは前途に申し上げている個別最適化に陥っているケースです。マーケティングプロセスにおける全体最適に向けて、営業プロセス全体を俯瞰できる、こちらもやはり戦略が語れる支援先が望ましい状況です。
自社でマーケティング戦略は立案できているが、施策をする上での人手が足りない
こちらは、個別施策の打ち手の人員不足ですので、BtoBマーケティングにおける施策支援会社へのご相談がベターです。
マーケティング施策を行うリソースは十分だが、戦略の精度を高めたい
こちらはマーケティング上級者ですね。市場の細分化やターゲット、ポジショニングを外部の支援を仰いで精度を高めていく事になりますが、こちらはコンサルファームが最適でしょう。多くの市場データから貴社の狙うべき顧客像に対する解像度が高まります。
以上、BtoBマーケティング支援企業の選び方でした。