本記事では、製造業のBtoB(法人取引)にて、マーケティングにこれから取り組まれる方向けに基礎的な考え方を解説します。
ユーマーケティングでは、製造業を中心としたプロダクトの製造業マーケティングを支援してきました。
その中でお客様の声として多いのが、製造業におけるBtoBマーケティングがどのようなものか分からない。取り組んでいるものの、それが正しい活動なのか分からない。施策は打っているがお問い合わせにつながらない。といった声です。
製造業マーケティングには基本形があり、BtoBマーケティングの全体像や考え方を理解し、BtoBの特徴を意識しての活動が不可欠です。
製造業BtoBマーケティングとは
BtoBですがBusiness to Business、つまり法人間取引のことです。マーケティングは学問の世界ではマーケティング・ミックスの4Pと言われProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の整合を取りながら売れる仕組みづくりを目指すものとされますが、多くの場合マーケティングはこのプロモーションにフォーカスされていて、従来通りお客様とのリアルな接点に加えてデジタル接点も含めた形でお客さまと継続的にコミュニケーションを継続することで、マーケティングが貴社の売上に貢献することを目指す活動になります。
なぜ、製造業においても急激にマーケティングが求められるようになっているのか。それは世の中のデジタル化の流れが大きいのですが、それがコロナ禍によって大きく露呈しました。
多くの企業は対面での接点を避け、リモート商談化。各社においてリモートワークに舵を切り、オフィスの電話も繋がりにくくなりました。つまり、お客様はいわばデジタル化が強制的に進み、営業からの情報収集ではなく、デジタル(ウェブサイトを中心とした様々な情報収集源)へと急激にシフトしています。
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製造業にもマーケティングが求められている
日本IBMが調査したデータにこのようなものがあります。 これについては別の記事でも触れています「衝撃のデータ ベンダーにコンタクトする前にリサーチを完了 77%」
- お客様はベンダーにコンタクトする前に77%の方がデジタルチャネルで情報収集を終えている。
- 非対面の営業を望む方が88%
- 購買前に5つ以上のオンラインコンテンツを確認する方が82%
つまり、お客様はデジタルでの情報収集を加速させ、オンライン商談を望む方が増加してるのです。
ただ、製造業のプロダクトはオンライン(ウェブサイトなど)でご説明しきれるものではなく、やはり営業からのご説明は軽視できません。製造業のプロダクトは下記のような特徴があるからです。
- 高単価
- 深い専門知識
- 複雑性
製造業(BtoB)の特徴
製造業のマーケティングを考える際に、BtoBとしての特徴を理解する必要があります。
- 購入者と利用者が異なる(事業部内のそれを利用する担当部署と調達部門など)
- 関与者が複数で多層
- 決定方法が合理的
- 検討期間が中長期的
製造業プロダクトにおいては、担当者がすぐれた商品・サービスを発見したとしてもその場で購買ではもちろんなく、複数の同様商品・サービスをベンチマーク(比較検討)し、上長と合意形成、その後社内稟議を行い決裁。この決裁においては経理や調達部門が関与することもあるでしょう。
つまり、製造業マーケティングにおいては、ロジカルな商品・サービス説明、複数の方が関与することを前提とし、結果として購買にかかる時間が長いといった特徴があります。
製造業BtoBマーケティングのステップ
製造業BtoBマーケティングの進め方は、大きく下記のステップで進めます。
- STEP1:マーケティング環境の把握
- STEP2:STPの設定
- STEP3:内的環境:マーケティング・ミックスの策定
- STEP4:顧客とのコミュニケーション
STEP1:マーケティング環境の把握
マーケティング環境の把握は大きく分けて3つの視点から行います。
- 自社理解
- 顧客理解
- 競合理解
自社理解
まずは己を理解しましょう。自社の商品、サービス、提供価値、訴求コンテンツ、受注要因、失注要因など、マーケティングにかかわるメンバー内で言語化し、共通認識を持つことはとても大切だと思います。
市場理解
お客様を知らずして貴社のプロダクトは売れませんね。マーケティングを行っていく上では、フィールド営業個人の力に頼る事はできません。マーケティングチームとして自社の顧客とは?を深く知る事が必要になります。まずはお取引のある既存顧客の情報から市場に対する解像度を高めて行きましょう。
競合理解
貴社の競合にあたる企業をベンチマークしていきます。特に競合がどのようなマーケティング施策を行っているかを把握することは重要です。マーケティング施策ではデジタルチャネル、特にウェブサイトを基点とした集客施策やナーチャリング施策の実施状況、もちろんプロダクトそのものの訴求コピーや内容なども含めて情報を集めます。
自社と市場・競合の棚卸しを終えると、SWOT(強み、弱み、機会、脅威)の情報が導きだされますので、内部環境としての強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部環境としての機会(Oppotunity)、脅威(Threat)を整理します。
ここで大切なのは、自社の弱みを強みでカバーできているかの観点です。
STEP2:STPの設定
改めて、貴社のお客様として相応しい企業はどのような属性の企業でしょうか。この時に、現在販売しているプロダクトの売りやすい先というよりも、本来であれば貴社のミッション、理念にもとづいてどの業界のどのような課題を持たれている企業に対してお役に立ちたいか、そのためのプロダクトはという順番で思考できるとベターです。
この時に企業にとって一番大切な「既存顧客」ですが、お客様を一番知る営業の協力や更にはお客様へのインタビューによって顧客解像度を高める必要もあるかもしれません。
STEP3:内的環境:マーケティング・ミックスの策定
製造業の企業がBtoBマーケティングを始めるにあたり、すべてのプロダクトを対象としてマーケティング活動を始めるのは多くの困難を伴います。まずは、比較的複雑性のない、情報提供し易い、購買プロセスが長すぎないといった観点から最適なプロダクトの選定を行い、着手することをお勧めしています。
対象プロダクトが決まりましたら、そのプロダクトに対する価格と流通経路に一貫性が保たれているかを確認の後、マーケティング施策を実行していくための準備に取り掛かっていきます。
この時に、いきなり製品サイトに対してSEO、広告といった施策を打つ前に重要なステップがあります。
- 現状を分析する
- 目標を設定する
- マーケティング実行計画を立てる
現状分析をする
この時点での現状分析は、マーケティングファネルにおけるボトルネックの発見になります。
分析ポイントの3つ
- 認知・集客ステージ
- リード化ステージ
- ナーチャリングステージ
プロダクトのマーケティング活動において、まだプロダクトの認知自体が不足しているのか、ウェブサイトへのアクセスが乏しい状態なのか。プロモーションしていく上でのリード(見込み顧客)数が不足しているのか。営業が回りきれていない顧客が多く、関係性を復活させたい・維持させる必要があるのか。
すべてのステージに対してマーケティング活動を行うのも多くのリソースを要するため、上記の3つのポイントからのボトルネックを見出してその改善からのアクションを推奨しています。
目標を設定する
マーケティング活動は、単なる集客施策でもなければプロモーションでもありません。製造業BtoBにおけるマーケティングは、売上に寄与するまでの一連の工程すべてを指します。フィールド営業が創出する商談以外にマーケティング活動によって創出する商談が、売上予算に対して何%とするかがマーケティング活動の目標値となります。
もちろんマーケティング開始当初から商談の創出は困難ですが、あくまでゴールは良質な商談の創出である点は振らさずに活動していきたいものです。
マーケティング実行計画を立てる
無限にマーケテイングに予算を投じることのできる企業はありませんね。必ずマーケテイング予算は存在し、その予算内での活動で最大の効果を狙わねばなりません。
マーケティングは従来からのリアルチャネルの活動に加えて、デジタルチャネルでの施策が大きくビジネスに影響を与える時代となっています。数あるマーケティング施策の組み合わせから、貴社のお客様に貴社プロダクトの価値をお届けし、商談を創出するための仕組みのパターンを計画しチームで検討していきます。
製造業BtoBマーケティングには横串を指すことが重要
多くの製造業企業が従来のWebマーケテイングの延長で各施策を行っていると思います。例えば認知・集客ステージでは、デジタル広告やSEOなどです。ウェブサイトにどれだけアクセスがあり、どれだけの人数が来訪しているか。
もちろんウェブサイトへの集客ステージですからそれも大切です。しかし、製造業BtoBマーケティングのゴールはあくまで良質な商談の創出です。少し偏った言い方をしますと、いくらウェブサイトへ匿名の方々のアクセスが集まっても良質な商談は生まれないのです。
良質な商談の創出には、認知・集客ステージ→リード化ステージ→ナーチャリングステージの各ステージに対して「横串」を通し、一貫したマーケティングディレクションが不可欠です。
多くの企業はこの横串を指すことなく、個別施策に没頭し結果個別最適は行われているのですが、マーケティング全体としての全体最適が行われていないケースがとても多いと感じています。
製造業BtoBマーケティングに大切なMPO(Marketing Process Optimize)
ユーマーケティングでは、BtoBマーケティングにおける全体最適をMPO(Marketing Process Optimize)として提唱させていただいております。
情報過多の時代に貴社の素晴らしいプロダクトの認知を獲得し(見つけてもらう)、お客様が抱えている課題を解決するその理由をお伝えすることで興味を持っていただき、デジタルチャネルから名刺情報をいただきます。
BtoBの購買プロセスの1つの特徴として、購買プロセス期間自体の長期化が挙げられます。産業材の場合、数ヶ月から数年というプロセスは珍しくありませんね。いかに見込み顧客との中長期的な関係性を維持するかのリードナーチャリングが肝となります。この関係性維持の段階ではMA(マーケティングオートメーション)ツールの利用は必須になります。
顧客側の購買行動がいつ何時スタートするかは、ベンダー側は知るよしもありませんが、来るその時に備えてMAツールと見込み顧客とを紐づけておくことで、購買温度感が高まったタイミングを検知することができます。
その高まった購買意思をもった良質な顧客を見出し、商談化していきます。